寄稿 吉田 浩二さん (8期) 屋久島 宮之浦岳登山

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屋久島 宮之浦岳登山

屋久島は、全島をカヴァーするのに国土地理院1/25,000の地図
7枚が必要です。
 偶々縁あって、今年のアウトドアイベントとして、九州で一番
高い宮之浦(1,935m)に登ることになりました。100名山のひとつ
です。100名山を目指しているのでもありませんが、高校山岳部
から登った山のうち、100名山を数えたら十数年前に93でした。
それ以来縁がなかったものの、熊本へ移住したことで、屋久島
に近づいた意識はありました。

 娘が屋久島に呼ばれた仕事にかこつけて、息子二人を含めて
中学生5人を連れて行くが、車に一席ゆとりがあり、島では別
行動で良いというので、便乗することにしました。

 狙いは、淀川登山口から宮之浦岳へ行き、山中一泊して、
縄文杉、ウイルソン株、三代杉経由で荒川登山口へ下山する
という縦走コースです。喜寿目前の高齢者には、少し厳しい
かなという心配もありましたが、少なくとも初日は快晴で、
予報も安定しているので、単独行ながら出発しました。

 本当は、前日のうちに渡島の予定が、思わぬ車のトラブル
で、最終便高速フェリーに乗りそびれ、鹿児島で宿を捜し、
翌朝一便で渡島、タクシーを頼んで登山口にたどり着きました。

 身支度をして歩きだしたのは、11時30分となり、予定の
小屋には暗くなってしまうだろうと覚悟の上でした。
登山口から50分の所に、前日入山なら泊まったはずの淀川
(ヨドゴウ)避難小屋でランチにしました。

 平成7年に環境省がかなりの予算で山道を整備したもの
の、その後の保守がされていないようで、木道、木の階段
も崩れたところは障害物競走の様相、かなり体力消耗になり
ました。池塘の木道は良いのですが、1m近く地上から浮い
た木の階段道は自然保護にもならず、むしろ歩きにくく、
濡れたら滑りそうで、危なさを覚えました。

 時間にゆとりがなく、空身往復50分とお薦めの黒味岳には
寄らず、ひたすら宮之浦岳に向かいました。一つ手前の山か
らはこんな風に(画像2)写るのですが、近づくと2度も頂上が
逃げて、その都度、降りては登り返し3度目にへとへとの状態
で着きました。写っているのは、標識を写している自分の影
です(画像3)。

 既に、陽が傾き気味の頂上で小休止、目指す小屋まで3.5km
の道標でした(画像4)。下り初めて1時間、薄暗くなりヘッド
ランプを用意しました。ここでハプニング、新しい乾電池を
セットしたのに点灯しません。しばらくあれこれ試しましたが、
諦めました。避難小屋までまだ1時間はありそうだと値踏みして、
暗い道を歩くリスクより野宿を選択しました。

 雨の心配は無さそうなので、風を避けられる場所を選び、
ダウンジャケットや持っている衣類を着込み寒さ対策をして
から、腹ごしらえが終わったのが、8時、さて明るくなる
までの9時間をどう過ごすか思案しました。月の出が遅かっ
たこともあり、疲労した体を横たえ、晴天の星空を仰ぎ、
ボーとしながらいつの間にか微睡ました。何度か体の位置
を変え、空が明るみを見せたとき、なんとか危機を乗り越
えたと安堵しました。もし天候が崩れれば、暴走老人の
遭難騒ぎになったと自戒しています。

 泊まる予定だった避難小屋で、時間をかけて暖かい朝食
をとりました。縄文杉手前からは、屋久島名物の雨のおも
てなしまで受け、縄文杉ツアーの渋滞とすれ違いながら、
長いトロッコ道を荒川登山口に達した時は、足がパンパン
に腫れていました。

 環境庁が縄文杉に施した南北の展望台とそれを巡る大仰
な木道階段道路は、世界自然遺産を守るつもりのお役所仕事
の典型で、7,000年以上生き永らえている縄文杉の神秘性を
かえって損なうものだと思いました。

 加えて言えば、山の自然保護と山道の作り方に関しても、
予算ありきのお役所仕事は、自然災害や保守を無視している
ようで、多くの疑問を残しています。宮之浦岳登山の事故が
多いのではないかと思った次第です。

 長い山の経験を掻き集め、あわや遭難の危機を免れて無事
生還できました。
                                                              (2019年8月21~22日)

 管理者注
 1: 本稿は杉並区立西田小学校同窓会会報23号に掲載されました。
 2: 吉田浩二さんのフェイスブックもご覧下さい。
   https://www.facebook.com/koji.yosida.733450?
画像1
画像2 山頂指呼の間しかし・・・
画像3 山頂
画像4 避難小屋へ3.5km, What happened ?
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