「雅楽の苦悩と愉楽」
私の2020年は心機一転、正月松の内、雅楽の演奏会で幕を開けました。松溪中学校第一期生芝祐靖さんが創設した伶楽舎の演奏会です。滅多に演奏されない曲目「盤涉参軍」(ばんしきさんぐん)という長大な雅楽を体験したくて、何の準備も畏怖も抱かずに席に着きました。原曲は966年編纂、千年も過ぎてから芝祐靖先生が復曲されましたが、公開全曲演奏は伶楽舎も初という難曲なのです。
プログラムを開くと、さあ大変。午後2時半から5時半までが「序」の部で全13帖(楽章)、午後6時半から9時半までが「破」と「急」の部で全11帖。それぞれ各3時間。休憩は各々たったの15分のみ、「全曲聴く方は午後5時半と6時半の間にロビーで食事を摂ってください」とのアナウンス。(弁当持参か?んなことチケットのどこにも書いてなかったぞお~。)全曲聴くと6,000円(半曲3,000円、私はこちら)時間はバイロイト音楽祭並ですね。
楽曲は、素人にとってはほぼ同一パターンで粛々と進行。粛々、粛々。うーん、まぶたがおちるう~。Zzzz・・Zzzz・・。前方席の方々は身を乗り出して雅楽と真剣にに対峙、私が座った後方の方々は身を崩して真剣に待避を考える(多分私だけでしょうね)。しかし、しかし、不思議ですね。徐々に長大なリフレインを面白く感じるようになってきたのです。知っている演奏者がサンドイッチなんかつまんだりして入れ替わり立ち替わり出てくるので「あっ、松溪にこられた方だ」とか「見たことないけど美しい方だな」とかの妄想も働いたのは確かです。演奏家は楽章のまとまりごとにすこしずつ交代します。しかし、その間5分。観客はトイレにも行けません。「行ってもいいですよ」って最初に伶楽舎重鎮の宮丸さんから案内がありましたが、いやー、なかなか出にくい。
帰りのエレベーターの前で、芝祐仁さん(芝祐靖先生ご子息、松溪中学同窓生)にお会いし、「面白い曲ですね」「またいつか松溪で演奏会を」などとちょっと本心からではないようなこともつぶやいてしまいました。会場からでると外は寒風。自宅直帰はしんどいので新宿御苑近くの居酒屋へ。熱燗3本とあん肝、岩手で獲れたとかいうハッカク、カガミダイ(いずれも初対面)で新春の伶倫楽遊に乾杯しました。
寄稿 小林 眞人さん(10期)芝祐靖さん追悼雅楽演奏会
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